和乃果、和乃顔。vol.2

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2021.06.15

「和乃果」は、山梨の強みを活かすプロジェクト。

 お菓子というのは人が集まる場において会話のきっかけをつくる大切なアイテムであり、場を盛り上げるコミュニケーションツールだと思っています。ですから、お子さんはもちろんのこと家族のみなさんに「楽しい」と感じていただけるお菓子づくりを普段から心がけています。たとえば清月では「ドリームケーキプロジェクト」といって、お子さんが描いた夢を実際にケーキにしてプレゼントするというイベントに参加しているのですが、そのケーキを家族で食べる時に、お子さんの夢を話題にしていただけたらうれしいですね。
 
 「和乃果」のプロジェクトのオファーが来た時、正直に言いますと、最初は県内の果実を使ったお菓子とかそういうありきたりのお話かななんて思っていました。ところが、プロジェクトを進めて1年経つんですが、和乃果創業者の保坂東吾さんの想いとか熱意を聞いていくうちに「あ、まわりにはない考え方だな」と共感するようになりました。たとえば、果実農家さんや果実を加工する人たちにスポットを当てて表に出していく考え方っていままでなかったんです。これはおもしろくなりそうだと。

 山梨の果実は、生で食べるのがいちばんおいしいです。ただ、違った食べ方の提案として、旬なときに食べる事ができない人に「和乃果」はスイーツとして果実の旬のおいしさを引き出し提供できる。そこがお菓子としての強みになると思っています。山梨には、こだわっていい果実を作ってくださる方も、旬のおいしさをそのまま加工してくださる方もいらっしゃいます。そんなアーティストさんたちと手を組んで、試行錯誤して、それぞれの強みを活かしていければ、「和乃果」ならではの上質な果実菓子をお客様に提案していけるのではないでしょうか。

果実に加えるひと手間と、菓子職人の手の仕事を大切に。

 「和乃果」は、ブランドコンセプトの中で日本の文化をとても大切に考えていて、日本の伝統的な所作を活かしたお菓子づくりを行っています。具体的には、ひと手間加えた旬の果実のおいしさを活かすべく、「まく」「はさむ」「おす」「つつむ」とすべての行程を菓子職人の手仕事によって仕上げています。

「まく」。
旬ならではの魅力を
存分に引き出す果実ロールケーキ。

 「まく」は、清月のロールケーキのノウハウを最大限に活かして、旬の新鮮な果実だけを使った店内販売のみの期間限定商品です。この時季は、苺のロールケーキですが、イメージとしては苺大福のようなロールケーキ。果実の色が美しく映えるようにジェノワーズはあくまでも白く。そのために黄身が白い玉子を使っています。また、梨北米の米粉を100%使って、スポンジの密度を濃くして薄めに焼いて、もちもち感のあるジェノワーズに仕上げています。生クリームも苺とのベストな相性をかなえるために、100%純生の乳風味の強いクリームを使ってコクを出しています。果実は、清月と以前からおつきあいのある農家さんと連携して上質のものだけを厳選して使用しています。今後は、桃やシャインマスカットなど、旬の果実をベストなおいしさで巻いていきます。

「はさむ」。
旬のおいしさを凝縮した
贅沢な果実バターサンド。

「はさむ」の主役はなんといってもバタークリームですが、山梨県産のドライフルーツを贅沢に使っています。いまのシーズンは、巨峰・苺・キウイ・柿の4種ですが、それぞれのドライフルーツを勝沼醸造さんのワインで煮て甘味と酸味のバランスを整え、発酵バターを100%使用したバタークリームに仕上げています。発酵バターは、一般的なバターよりもコクがあるので、その乳風味は果実との相性が抜群にいいんです。サブレに関しては、このバタークリームの果実の自然の色を引き立てるために、白く焼き上がるようにこだわりました。

 サイズは女性がふた口でたべられる大きさの3.5センチ角としました。これでまずは、カリッと口にしたときのサブレとバタークリームの食感の違いを味わっていただきます。そのあとは、コクのある発酵バタークリームの乳風味が広がり、果実の豊かな味わいと相まって余韻が鼻に抜けていく。そんなイメージでおいしさの設計をしています。サックリと食べたい人は、冷凍したものを解凍して。しっとりと食べたい人は、常温でサブレがしんなりしてからお召し上がりいただくといいと思います。どんな飲み物にも合いますが、紅茶との相性は抜群です。

「おす」。山梨の実りの幸をひと押しに込めた果実干菓子。

 干し菓子、あるいは干菓子(ひがし)。これは、日本の伝統文化に息づいた品格の高い和菓子です。一般的に干菓子とういと堅い歯ごたえのイメージがあると思うんですが、「和乃果」はほろっとほろける口どけ感を大切にしてつくっています。この干菓子、原材料はとてもシンプルですが、天候や季節によっても押し加減や水の分量などの仕込みが違ってくるじつにデリケートなお菓子なんですよ。

 苺・シャインマスカット・桃は、旬に採れたものだけを農家さんでフリーズドライしてもらっています。これを菓子にする直前に粉末にして純糖と練り合わせています。実際には果実をおよそ20%も練り込んでいますが、これが干菓子としてはほぼ限界。ここまで果実感にこだわった干菓子はそうはないと思います。もちろん、着色料は一切使っていません。自然のままそのままの果実の色や甘さを味わっていただきたいですね。

 また今回は、ラインナップのひとつとしてワインを絞ったあとのワインパミスを初めて使いました。干菓子に合いそうな山梨の素材をいろいろと模索している段階で、私自身はじめて出会った素材です。パミスだけを口にすると葡萄の苦味と渋味がかなり強いのですが、これを実際に試してみたら純糖との相性が抜群によく、パミスの個性が見事に旨味に変わりました。

 そしてもう一品、ぜひ大人の方に味わっていただきたいのが荏胡麻(えごま)です。これ正直に言いますと、和乃果創業者の保坂東吾さんの強い要望から生まれた味なんです。味のラインナップに強いアクセントと遊び心が欲しいという事で、なんと、京都の黒七味を使ってくれというオーダーがあったんです。菓子職人としてはびっくり仰天でした。事実、いろんな果実と合わせてみたんですが、やはり黒七味のスパイシー感が勝ってしまう。そこで果実だけでなく山梨の農産物まで手を広げて黒七味と相性のいい食材を探しました。そして、早川町の荏胡麻と出会いました。ローストした荏胡麻の余韻と黒七味の刺激、この味わいが完成したときは、やった!と痛快な気分になりました。かつてない大人の味の干菓子です。濃いめの緑茶などとの相性はもちろんですが、ウイスキーなどの強いお酒と一緒に味わっていただきたいですね。

「つつむ」。
山梨のとっておきをつつんだ
宝石のような果実ショコラ。

 山梨県のおいしさをギュッと凝縮して、フランス産の高級ショコラでつつんでみました。いわゆるボンボンショコラ、型を使ったモールディングの技法でいろんなものを中につつむことができるので、多彩な食感を楽しんでいただける商品です。中身がイメージできるように、色をつけたりパールをかけたりして、宝石のような美しさや見た目の楽しさにもこだわりました。けっこう手間をかけていますが、手づくりだからこそできるラグジュアリーなお菓子です。

 紫色の中身は、赤ワイン。グリーンパールは、白ワイン。勝沼醸造さんのワインをそれぞれ3分の2まで煮つめて味を濃縮したジュレが入っています。さらに、ショコラにワインを合わせたガナッシュで2層の中身に。でも、それだけではありません。ひと手間遊び心を加えて、弾けるキャンディーの粒を仕込んでプチプチッとスパークリング感を演出しています。口にしたときの食感のインパクトを楽しんでいただければと思っています。

 ホワイトショコラに赤いカカオ色素がアクセントの苺は、フレッシュな山梨県産の苺を銅鍋で煮つめたコンフィをメインに、ガナッシュには第4のチョコレートと言われているルビーショコラを使っています。このショコラ、本当に天然のピンク色をしていてベリー系の果実との相性が抜群にいいんです。この苺の商品は、いまの季節だけの限定の味わいです。

 ベージュは、荏胡麻(えごま)。ローストした荏胡麻を粒のまま使い、スパイシーな黒七味と合わせたミルクショコラのガナッシュです。この個性の強い中身にマッチさせるために、つつんでいるショコラは黒糖を練り込んだフランス産のショコラを使っています。荏胡麻と黒七味と黒糖のショコラ、この唯一無二の抜群の相性は、ぜひ一度味わっていただきたいですね。この果実ショコラは、大切な方へのプレゼントや、何かを成遂げたときの自分へのご褒美として使っていただけたらうれしいです。

 「和乃果」の夢は、いつも安心して楽しく食べていただけること。そして、農家さんや果実を加工してくださる方々と連携して共に発信していけること。旬の果実を活かして、山梨の良さをひと口で表現できるお菓子づくりを全うしていきたいと思っています。ぜひ、牧丘のお店までお出かけください。

株式会社 清月 工場長・シェフパティシエ 中村秀幸

2003年清月に入社。菓子の腕を磨き、現在清月のシェフパティシエとして活躍中。ジャパンケーキショー等、数々のコンテストで受賞。受賞歴:2013年「山梨ケーキショー」総合優勝、2015年「山梨ケーキショー」総合優勝、2015年「ジャパンケーキショー(全国大会)」銅賞。その他多数受賞歴あり

撮影:砺波周平 文章:梶浦道成 撮影場所:和乃果 牧丘本店