和乃果、和乃顔。vol.10 | 道枝 信吾

2026.06.12

長崎県の岩㟢紙器と和乃果。

私たちが和乃果のプロジェクトに本格的に関わらせていただくようになったのは、2021年の10月頃のことだったと思います。それより以前は別の業者様が間に立たれていたそうですが、「想いをダイレクトにパッケージメーカーに伝え、より良いものに仕上げたい」という強いこだわりから、長崎県の弊社を探し当ててくださいました。

お話を伺ってみると、ブランドとしてはすでに好調にスタートしているものの、パッケージの仕様やコスト、デザイン費などの面でいくつかの課題を抱えているご様子でした。弊社はデザインの形状提案から製造までを自社工場で一貫して行えるメーカー。そこで、「直接コミュニケーションを取りながら、より和乃果ブランドらしい理想の形を一緒に探っていきましょう」とご提案したところ、保坂社長に共感いただき、そこから具体的な二人三脚の箱づくりが始まりました。

老舗箱屋の挑戦。

最初のお仕事で最大の挑戦となったのが、箱の内側にあしらう染色画の再現でした。

染色家である古屋絵菜様が手がけられた染物の「ぶどうの絵(布)」を原画とし、「この1点ものの布の質感を、そのまま箱の中に再現してほしい」と保坂社長。

しかし、布と紙では印刷の仕組みもジャンルも全く異なり、発色が変わってきます。古屋様の作品が持つ、独特の陰影や仄暗さ、そして儚げな空気感をいかにして紙の上に再現するか……。試行錯誤がはじまりました。

まずは原画をスキャンし、簡易印刷機での色出しと量産用のオフセット印刷機での仕上がりの差を予測しながら、Photoshopなどのソフトを使って部分的なトーンを何度も時間をかけて調整。そして実際の印刷機を使った「本機校正」をかけた後、さらに微調整を重ねました。こうすることで、限りなく原画に近いクオリティまで引き上げることができたと思います。弊社にとっても大きな、そして誇らしい挑戦となりました。

サイズ、形状、そして何万種類もの紙から選ぶ。

現在も和乃果で新しい商品が誕生するたびに、私たちはパッケージの形状提案やサイズ設計を行っています。

一つの箱が出来上がるまでには、皆さまが想像される以上に多くのステップがあると思います。まずは中身となるお菓子をお預かりし、「これをいくつ納め、どう見せたいか」というサイズ感から全体の見た目のバランス、ご予算に合わせた形状を模索します。

形状が決まると、いよいよ「紙選び」です。弊社では、日本国内で流通している何万種類もの紙を網羅して取り扱っています。和乃果との最初の取引の際にも、サンプル帳をどっさりとお持ちしました。

和乃果の根底にあるのは、上質な世界観。そこで私は、私が個人的にも大好きだった高級感のある紙をご提案しました。ツルッとした一般的な紙とは違い、表面に細かい砂をまいたようなエンボス加工が施されており、手にしっとりと馴染む質感を持っています。保坂社長 も「これにしよう」と一目で気に入ってくださり、今ではこの独特の触り心地が、和乃果の箱のアイデンティティになっています。

手にとった瞬間を、高揚感で満たしたい。

弊社の創業は今から60年ほど前。もともとは地場産業である陶磁器を梱包するための段ボールや緩衝材作りからスタートしました。そこから時代を経て、現在の3代目社長が「貼り箱」のジャンルに注力するようになります。

現代、箱づくりの多くは自動機械張りが主流ですが、弊社がもっとも得意とするのは熟練の職人が一つひとつ手作業で仕上げる複雑な形状の「手張りの貼り箱」です。社内は現在も地域の職人集団とともに高い精度で箱を作り上げています。

箱というのは、ただ中身を守り、隠すためのものではないと考えています。例えばお客様がギフトを受け取り、袋を開けたとき、一番に目にして触れるのは箱。つまり、箱は「商品の一部」そのものだと考えています。たとえ中身が同じだとしても、箱に宿るクオリティが手にした時のワクワク感や喜びを何倍にも膨らませてくれると信じています。

実際、和乃果の箱は「食べ終わった後も捨てられずに小物入れとして二次利用している」というお声を多く耳にします。もっと言うと、フリマアプリに出品されているのを見かけた時は驚きとともに、嬉しさを感じました。

現在、私たちは来春発表予定の、新作のショコラ用パッケージの微調整を重ねています。和乃果の皆さんとのお仕事は、決して一発でOKが出るような簡単なものではありません。皆様のものづくりに対するこだわりが非常に強く、絶対に妥協を許さないからです。

だからこそ、私たちもやりがいを感じられる。その強い想いと高い目標に、ふさわしい技術で応えたい。これからも、手にとった瞬間に気持ちが高揚するような、最高の「一番外側」を提供し続けたいと思います。

岩㟢紙器 道枝 信吾

長崎県出身。大学進学を機に上京し、在学中から都内のデザイン会社にて設計・デザインのキャリアをスタート。6年間の実務を経て帰郷。現在は岩嵜紙器にてWEB担当営業を務める。幼少期より、ものづくりが大好き。

撮影:高橋 茉莉 文章:小栗 詩織 撮影:岩嵜紙器